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和食文化学会:会長挨拶
和食文化学会は2018年に設立され、今年でちょうど7年目を迎えます。ポストコロナ時代を迎え、日本は長期の低迷、少子高齢化、地方の衰退、円安に象徴される国際的地位の著しい低下など困難な状況に見舞われております。地球規模で考えると、80億人を超える地球人口を支える食料供給の不安、地球温暖化に典型的に示される著しい環境破壊、ウクライナ戦争やパレスチナ危機にみられる国際紛争の激化など、内外にわたり危機的状況に直面しております。
そして何より重要なことは、これらの危機的状況はほとんどすべて「食」の問題と切り離しては考えられないということです。こうした問題の解決のためには、文理融合的なさまざまな領域の学際的な研究を社会課題と結びつけつつ展開していく必要がありますが、食文化研究もまた、今やそうした課題解決に貢献することが求められていると感じます。
和食文化学会は、こうした状況の下で、今後より幅広い活動を展開していく必要があるように思われます。そして、アカデミックな研究活動だけではなく、「食」の分野で日々奮闘しておられる現場の方々の実践もまた重要な意義を有しております。さいわい、今日「食」という分野には多くの方々が関心を寄せられ、若い世代の研究者や実践家がどんどん育ってきているように思われます。今後こうした若い世代の方々が和食文化学会の活動の中心となることが期待されます。
初代会長の佐藤洋一郎先生は草創期の重責を担われ、学会の基礎をしっかりと固められました。次の会長の原田信男先生はちょうどコロナ禍の時期にあたり、困難な状況の中で学会を着実に拡大していかれました。今回わたくし南が第3代目の会長に就任することになりますが、こうした若い世代の食文化研究および実践がますます発展していけるように、そのためのつなぎの役割を果たすことが、自分に課せられた使命であると考えます。
佐藤先生は海外にも名前が知られた高名な研究者であり、最近では米の歴史や京都の食文化など和食文化学会会長の名にふさわしいご研究を発表されておられますし、原田先生は、何といっても日本の食文化の歴史研究のパイオニアであり第一人者であることは衆目の一致するところでありますが、ドイツ近現代史を中心とする西洋史学が本来の専門分野である私が会長職にふさわしいかどうか、いささか逡巡するところもございました。しかし、草創期からの学会の状況についてよく知っている数少ない人間の一人であること、食文化研究に関する様々な分野での活動の経験を積んできたことなどの点を鑑み、会長職の重責を引き受けることといたしました。
今後は、創立時から事務局長を務められてきた平本毅先生をはじめ、副会長のハイン・マレー先生、山本芳華先生、鎌谷かおる先生、会計の守屋亜記子先生、それと今年度は海外に出ておられますが来年度から副会長となられる落合雪野先生などの常任理事の先生方、さらには引き続き、あるいは新たに理事になられた諸先生方に助けていただきながら、学会を運営していく所存です。なにぶん力不足の会長でございますので、なにとぞ学会員の皆様の多大なるご支援を賜りたく存じます。
和食文化学会は、まだ発足してようやく7年目という歴史の浅い学会ではありますが、すでに6回の研究大会の実績を積み重ね、その他社会から注目される学会活動を展開してまいりました。今後会員の皆様のお力を結集し、ますます活発な活動を遂行していきたいと考えております。
以上をもって私の就任のご挨拶とさせていただきます。今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。
2024年5月
和食文化学会会長 南 直人