2019年12月に出現した新型コロナウィルスは、瞬く間に世界中をパンデミックに陥れ、人と人との接触を極力避けなければならない、という状況を強いています。集団で生きていくという生存戦略を選択した人間にとって、行動原理の根本を否定されたようなものです。基本的に学会の研究大会は、その場の雰囲気を感じながら対面で行い、懇親会などで気軽に感想や意見を交換することが基本なのだと考えますが、やはり感染症の蔓延はどうしても回避しなければなりません。そうした状況が2年も続いてしまいました。
とても残念でなりませんが、人間の知恵と技術は凄いもので、オンライン会議というシステムを生み出しました。おかげで世界中のどことでも同時に画像と音声を繋ぐことが可能となりました。そこで今回の和食文化学会では、海外の研究者を交えて、公開シンポジウムを開催することに致しました。和食を世界的な観点から見つめ直すことは、とても重要な課題だと思います。対面の断念という代償としては、充分に価値ある企画だと考えます。また今年度の研究報告も、全体にバラエティに富んでいると同時に、実践的な課題も多く、かつ若い人々のグループ報告もあって、非常に好ましい傾向だと言えましょう。対面ではないという欠点はありますが、それを補って余りあるような研究大会になるものと信じております。
和食文化学会会長 原田 信男
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昨年につづき、2021年度の和食文化学会第4回研究大会もオンライン開催となりました。和食文化に関する研究発表の場を提供するだけではなく、みなが集い、飲食をともにしながら、和食文化の歴史と未来を語りあう機会を提供することも、本学会のつとめのひとつです。そうした機会が奪われている昨今の状況を残念に思います。
しかし、「ピンチはチャンス」とばかりに、オンラインならではの企画を考案いたしました。それは、海外の3都市と日本をつなぎ、香港、マニラ、サンパウロ、レイキャビクにおける日本料理のいまを報告してもらうシンポジウムです。おなじアジアにありながら、異なった日本料理の歴史をもつ香港とフィリピンにくわえ、たくさんの日系人が生活するブラジルにおける日本料理、ノン・ジャパニーズによるノン・ジャパニーズのための日本料理が人気のアイスランドの事例は、和食文化の裾野のひろさばかりか、「生命力」のつよさをも感じさせてくれます。それらの日本料理が、コロナ禍において、どのような変化を経験しているのか、も興味あるところです。
飲食業界にとっては、依然として厳しい環境がつづくことが予想されます。コロナ後の世界を見据えつつ、みなさんの叡智とともに食の未来を拓いていきたいと考えています。
第4回研究大会実行委員長 赤嶺 淳