和食文化学会

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和食文化学会:会長挨拶 和食文化学会の発展を願って

和食に限らず食文化の研究は、これまで学問として正面から取り上げられることが少なく、学会もありませんでした。しかし食は人間存在の基本であり、人々の生活に密接に関わっています。その生産から流通までのシステム、地域や季節と食材の選択、調理の方法や技術、味覚・嗅覚・視覚による味わい、食べる機会や場所と相手、さまざまな要素が食に関係してきます。逆に言えば、それほど複雑だからこそ、食の学問が成り立ちにくかったのだともいえましょう。それゆえ人文科学系や自然科学系の研究者のみならず、食材の生産者・加工関係・流通関係・栄養関係・飲食店・料理人などさまざまな現場の方々が研究の主体となる必要があります。そして、こうした多様な立場からの独自のアプローチとお互いの密接な協力関係によって新しい魅力的な食文化の研究が生まれることになります。
また2003年に、「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録され、和食が大きな注目を浴びるようになりました。1960年代の高度経済成長期以降、日本人の食事の西洋化が進展するのなかで、伝統的な日本の食文化つまり和食の衰退という問題も起こりました。和食は、先人たちが日本の長い歴史と豊かな風土のなかで築き上げてきた大切な文化です。そして和食文化学会は、この和食をまさに食文化という観点から究明していく研究者の団体として、2018年に発足しました。ただ和食といっても、アジアのみならず世界の食文化なかの一つに過ぎません。その意味では、広く海外の食文化についても眼を向けていく必要があります。 和食文化学は、まだまだ新しい学問分野ですが、これまでの伝統を踏まえた和食文化の継承と発展は、豊かな食生活を私たちにもたらしてくれるはずです。和食文化学会に、さまざまな分野からの参加と御協力を望む次第です。
2023年4月
                 

和食文化学会会長 原田信男